「発注はエクセルで受けていて、工場とのやり取りはLINE。請求の金額が合わない月があるけれど、どこでズレたのか追いきれない」
店舗と工場を持つ食品の会社では、珍しくない形です。人が足りないわけでも、雑にやっているわけでもありません。むしろ真面目な人が、手間をかけて回しています。
この記事では、実際にこの形で回していた食品の会社の事例を書きます。何がズレていたのか、気をつけるだけではなぜ止まらなかったのか、どんな受発注システムで直すことにしたのか、の順です。
1. こんな相談でした
- 業種
- 海外ブランドの焼き菓子を日本で製造・販売している食品の会社
- 規模
- 自社の工場が1つ、常設の店舗と、駅や百貨店の催事。店舗は自社のものと、別の会社が運営するものの両方
- 発注
- 店舗がエクセルで工場に発注。同時に動く商品は10種類前後
- 連絡
- 工場・店舗ともにLINE
困っていたことは、大きく2つでした。請求のミスと、工場の手間です。
| 起きていたこと | どうなるか |
|---|---|
| エクセルの発注表で、金額がズレる | 月末の請求書が合わず、どこで違ったかを探す作業が増える |
| 店舗の検品の数と、工場の出した数が合わない | どちらの数で請求するのかで、毎回話し合いになる |
| 工場が納品する店や数を間違える | 店で商品が足りない・余る |
| 「忘れてました」「知りませんでした」 | 誰の責任か分からないまま、同じことがまた起きる |
2. 気をつけるだけでは止まらなかった
それまでは、人が気をつけることで回していました。
工場のLINEには、1日に100件ほどの連絡が流れていました。伝票の写真、「送りました」「どうなってる?」「忘れてない?」。店舗のLINEも同じで、「明日の人、これ確認して発注して」が続きます。
確認を重ねるほど、LINEの件数が増えます。件数が増えるほど、大事な1件が流れて見落とされます。気をつける量を増やす方向では、ズレは止まりませんでした。
3. ズレの原因は、人ではなく「決まっていないこと」だった
やり取りを並べてみると、間違いの多くは、誰かのうっかりではありませんでした。そもそも決まっていないことがあったのです。
- 請求は、工場が出した数で立てるのか、店が受け取った数で立てるのか
- 請求の月は、注文した日で切るのか、発送した日で切るのか
- 注文の数を、いつまでなら変えてよいのか。変えるときは誰が認めるのか
- 連絡は誰が書いて、誰が読んだことになるのか
決まっていないから、毎回その場で人が判断します。判断する人が変われば、答えも変わります。これが「金額が合わない」「言った・言わない」の正体でした。
もう1つ、お金に効いていたズレがありました。店舗は、あとから数を増やすと工場に断られることがあるので、予定の発注を多めに出します。工場はその予定を見て人を集めます。実際の発注が予定より少なければ、そのぶんの人件費がまるごと損になっていました。
4. 受発注システムで、決めたことを仕組みにする
市販の受発注サービスに合わせて仕事のやり方を変えるのではなく、この会社の流れに合わせた受発注システムを作ることにしました。先に上の「決まっていないこと」を代表と1つずつ決め、その答えをシステムの動きに入れています。
- 店舗と工場が、それぞれログインして使う店舗は画面から発注し、工場は同じ画面で受注を見ます。エクセルを送り合うのをやめるので、表のズレがなくなります。
- 請求は「工場が出荷した数」で立て、「発送した日」で月を切る店に受け取りの入力を求めません。店が「数が少ない」と気づいたら変更を依頼し、責任者が認めたら出荷の数を直します。どの数で請求するかで揉めなくなります。
- 予定の発注と、確定の発注を分ける予定の発注は期限を決めて毎月出してもらい、確定の締め切りも設定で決めます。確定のあとの変更は原則できません。予定から大きく増えた・減ったものには印が付くので、工場は人を集めすぎずに済みます。
- 権限は3段階にするすべてを触れる代表、金額の修正と変更の承認ができる責任者、入力と変更の依頼ができる現場の人。誰が何を決めたかが残ります。
- LINEの代わりに「申し送り」を置く次の人に伝えることはシステムの中にメモで残し、読んだ人が分かるようにします。入力は個人の名前で行うので、「知りませんでした」が起きにくくなります。
- 伝票の番号は手で打たず、カメラで読む番号の打ち間違いをなくすため、バーコードをスマホのカメラで読み取ります。
工場の画面は、1か月・2週間・今週の3つで切り替えられるようにしています。1か月で全体をつかみ、2週間で来週の段取りを考え、今週の画面で「間違えない・忘れない」を確かめる、という使い分けです。
このシステムはいま作っている最中で、現場で使いながら直していく前提です。作って渡して終わりではなく、使われているかどうかを見て直すところまでを、私たちの仕事にしています。
5. 自社でも同じことが起きていないか
受発注のズレは、システムを入れる前に「決めること」を決めれば、半分は止まります。次の4つのうち、すぐ答えられないものがあれば、そこがズレの出どころです。
- 請求は、出した数と受け取った数のどちらで立てるか
- 請求の月は、注文日と発送日のどちらで切るか
- 注文の変更は、いつまで・誰の承認で受けるか
- 連絡を読んだかどうかを、どこで確かめるか
答えが決まったら、あとはそれを人の注意ではなく仕組みで守るだけです。株式会社Yamanaka JAPANは、こうした受発注や現場の仕組みを、その会社の流れに合わせて作っています。システム開発の進め方はこちらにまとめています。
いまの発注表とやり取りを見せていただければ、どこを決めればズレが止まるかを整理します。システムを作るかどうかは、そのあとで決めてもらって構いません。
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